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こんにちは、はじめまして。マロンといいます。 ちょうど10年ぐらい前でしょうか…ドラゴンボールの悟飯ちゃんに再熱して、サイトを開設していたものです。サイトの方は、5年前に私生活が慌ただしくなったことを機に閉鎖し、今は倉庫として放置しています。 今更ながらに、悟飯ちゃん愛が再熱してきまして…それでも私生活が慌ただしいことには変わりないので、長続きするかもわかりませんが、しばらくの間、ネット世界の片隅でわーわー騒いでいたいと思います。
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ルオさんからいただいたクロスクです。
「酔わせてやるから、来いよ」の対になっています…!!

もう私の言葉はいらない…!
ものすごくオススメなのです…!!はあはあ






 金色を纏い、悲愁の色を隠さない緑碧が、ずっと脳裏にちらついていた。一度は手中に収めかけたあの、刹那の温度が、このてのひらに留まったまま中々消えてはくれなかった。
 人格が代わると同時に髪色や眸の色まで変化するという過去に例を見ない奇異な症例ではあった。興味はそそられた。だがそれだけだった、筈だ。



「顔色が悪いな、大丈夫か?」
 あの逢魔時以来、この子供とまともな会話をしたのは片手にも満たない。廊下ですれ違う際、不意に見やった子供の余りの顔色の悪さに、気が付けば声を掛けていた。
 寝不足なのか、何か悩み事でもあるのか、よければ診察してあげよう。そう畳み掛けてどこか意識が散漫な子供を己の仕事部屋へと招き入れた。ふらり、覚束ない足どりで部屋に入り、ソファに座り込む子供。
 視線を下げてどこかをじぃっと見ている様は、誰が見ても可笑しい、と思う。
 その原因をクロウは充分に理解していた。否、させられた、とも言っていい。
 情の深いこの子供のことだ。きっとひたすらに思い人の言葉を信じようとしているのだろう、そしてその言葉によって自身がどれだけ傷ついているのか判らないほどに。

 だったら、オレがその傷をもっと深くしてあげよう。自覚できるほどに、もう、後戻りが出来ないように。

 久しぶりに帰った我が家で見つけた遊び道具を懐から取り出し、クロウはおもむろにスクへと差し出す。訝しげな表情で手のひらサイズのボイスレコーダーとクロウを交互に見やった。
「パンドラの箱だよ」
 そう言ってにこり、と笑顔を貼付けた。ますます怪奇な表情で今度はクロウをじっと見上げた。どこか生気のない黒曜石に「開けるか開けないかは君の自由だ」と付け加える。そう言われて拒否する人間など己の経験上ほんの数パーセントにも満たないことも周知した上での言葉だった。



「……っ」
 数分の葛藤を経て、やはり開くことを選択した子供の反応はクロウが思い描いたそれ以上のものだった。
 大きく瞠目し、揺れる黒曜石に戦慄く薄い唇。ややくぐもったふたりの人間の音声が発せられているボイスレコーダーを一心に見る。肩を竦めて腕を突っ撥ね、膝に置いた両手がぶるぶると震えていた。
 ああ、可哀想に。
 言葉は強固な鎖のようでいて、次の瞬間には薄っぺらい紙にも成り下がる。“信じる”という思い込みは、そんな曖昧でいい加減な言葉で以ていとも簡単に崩されるのだ。
「せっかくだから、もう一回、な?」
 停止ボタンを押し、先刻のやりとりをまた再生する。子供の片割れの発した“すきだ”という言葉に過剰に反応を示した。
「…ぅ、あ、……ぁ」
 こわれていく。ひとりの人間が、ぼろぼろと粉々に割れてしまったガラスのように、崩れ落ちていく。
 ああ、なんてうつくしいのだ。


 子供は苦しそうな表情で膝を曲げ、頭を抱えて蹲った。獣のような呻き声を上げながら何かを必死に耐えている。ぞわぞわと徐々に髪色が黒から金へと変貌していった。その様を静かに見ていたクロウは至極楽しそうに笑う。
「ほう、やはり君が主人格になったか」
 先刻の煩悶が嘘であったかのように、金色へと容姿を変化させたスクは静かに立ち上がった。伏せられた睫毛がゆっくりと上を向き、現れた眸は鮮やかな緑碧。
「どうだ、人の本質なぞこんなものさ」
 クロウは当然のように言う。温度を感じない緑碧でスクはただ、クロウを見やる。どこか懐かしいその眼差しにクロウはぞくり、と背筋が粟立つ。眩しい程の金色に手を伸ばせば、確かめるようにてのひらで撫ぜた。
「……これで答えも変わった、だろう」
 慈しむような手つきでスクの髪を撫でる。スクはただひたすらにクロウを見ていた。クロウはスクの腕を引き、距離を詰める。
「お前が望むなら…酔わせてやるさ」
 貼付けたままの笑顔を深くさせ、耳元で囁く。期待通りの反応の薄さにクロウは満足そうに目を細めた。
 スクはクロウの首元に擦り寄り、吐息が触れる距離でクロウを見上げる。どこまでも深い闇のような黒い眸子がさながら獲物を待ち構える獣のようなそれに感じる。けれどスクにはもう、選択の余地は微塵も残されていない。

 たすけて、といつかも呟いた言葉を皮切りに、スクはゆっくりと緑碧を閉じた。


~~~
「せっかくだから、もう一回、な?」

なんとルオさんにいただいてしまったクロスク…!!はあはあ
転載許可を得たので、こちらにもUPさせていただきましたvv
今私の顔人にみせれないぐらいにやけてる^q^q^

私が書いたクロスクと対になっているという、なんとも書き手冥利に尽きる設定なのです…!
ああもう、なんでこんなこまやかな描写ができるんでしょう…!!
心理がね、直接的じゃないのだけど、こう内側から訴えてくる強さを秘めた描写でえがかれているんだ…!
ルオさんの文章、ほんと大好きだ…!

何度お礼いっても言い尽くせませんが…ほんとにありがとうございました…!!
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